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のほほん、ペンギンライフ。

介護をめぐる冒険。〈施設を探す話③〉

 

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将来親の介護のことを考えると気が重い、という方は、未婚既婚問わず多いと思うんですが、私もそうでした。両親とも病気を抱えて入退院を繰り返し、いよいよ地元へ帰らなければ、と決意した時には、とうとう来たかと、苦手なジェットコースターに乗るための階段を上がるような気分でした。

でも、自分が故郷を離れている間、姉が仕事をなんども休職、転職して見ていてくれたので、姉の負担を思って心が痛い、というか自分は遊んだり家で昼寝したりしているのに姉にばかり負担をかけて申し訳ない、とずっと思っていたので、実際に「主たる介護者」に自分がなったり、医療費の多くを自分が負担した時、むしろホッとして、大きな顔をして「しんどいわぁ」と言いふらしていたようなところもあったかもしれません。

でも、今になって、私が介護をしているのは、多分「そうせざるを得ない」という状況で、自営業なので「できてしまう」部分はあるものの、本当は「私は介護できない」「しない」という判断、選択だって出来ただろうと思っているのです。

 

以前、父を見舞ってくれて、私や姉をねぎらってくれた看護師の友人がこう言ったのです。

「私は、父のことはみないって決めてるから」

優しい性格で、早くに母親を亡くしてからは、弟と父親と3人暮らしで家庭を支え、看護師になり、結婚後は訪問看護師として活動している彼女が、あまりにもきっぱり断言するのを聞いて、「ほぉ〜、そうか。そうだねぇ」と、なんだか目からウロコなのでした。専門職なのに、というか、だからこそ「他人がみた方がいい」と思っているのかもしれないなと。

 

そのことを踏まえつつ、施設探しの話を書きます。前々回からの続きです。

はじめに入院した急性期病院で、早めに地域包括ケア病棟(床)を備えた病院へ移り、その後リハビリ施設を経て、いずれ入居する施設を探すように、と促され、担当ケアマネージャーさんから候補となる施設の一覧(連絡先のみ)をコピー用紙数枚に分けていただいたのが、転院当日のことでした。

 

お金に比較的余裕がある方や、ある程度自立して生活できる方などは、すぐに入居できる有料老人ホームや、サービス付き高齢者向け住宅など選択肢はあると思うのですが、うちの場合は①年金額の関係で高額な施設には入れない、②要介護4である、③個室は孤独だと嫌がるので、ある程度賑やかで構ってもらえる環境が良い、④持病があるため常に医療機関との連携が必要である、これらをふまえて、予算の面からは〈特別養護老人ホーム〉を希望し、本人の快適さを考えて費用面は一度無視して〈グループホーム〉も検討したい、という流れで、施設としては二種類、そして施設入所までの間の機能訓練施設〈老人保健施設〉の見学も含めて行うことにしました。

 

ケアマネさんが用意してくださった一覧表には数十件の施設が載っていて、そこから交通の便や、介護職経験者の姉から見て(仕事仲間からの「職場環境がキツい」と評判の施設や、求人情報で常に広告を出している施設、自分が系列の施設で働いた印象など)「あそこには預けたくない」という施設を除き、特養とグループホームで計8箇所程度、老健の方は選択肢が2箇所で、うち一軒はショートステイ先を選ぶ際に見学済みなので1箇所のみ見学することになり、一覧表の電話番号にかけて自分たちで予約を取り付け数日かけて回ったのでした。

 

1軒目。交通の便も良く、私たちにとっても通いやすい立地の施設。父の友人などが面会に訪れてくださったとしても、ここなら大丈夫、という感じの、白いレンガ造りで上品な外観。

お会いする職員さんは皆さん感じが良く、相談員さんと向かい合って座るロビーは大理石風の床にラタン家具で調和がとれておりリゾートホテルのよう。そこから大きな窓越しに見える、緑と花で彩られた庭には、先日移動遊園地がやってきて、お隣の幼稚園の子供達も招いて、入居者のみなさんも楽しまれたとか、今日はわらび餅作りをしているので見学されますか?など、夢のようなお話をされ、おまけに月額の利用料が、思っているよりずいぶんお手頃。リフォームしたという内装もピカピカで入居者さんも上品な方が多く、笑顔で、PR動画を目の前で見ているようでした。夢のような施設じゃないか。なにここ、私も住みたい...

「是非、ぜひこちらに今すぐ申し込みたいです!」と姉と私。

「はい、大歓迎です〜」と仰っていた相談員さんの顔が曇ったのは、入所希望が、私たちの「父親」だと伝えた時から。

「お父様...ですか」

大変申し訳ないのですが、私どもでは男性の入居者様は、ほとんど受け入れていないのです。女性とは別室になりますし、現在定員は8名(もちろん満床)となっております。そして、全体でお待ちいただいているのは300名様でございまして...

うなだれる私と姉。

「そして、申し訳ないのですが、医師による往診は週に二日ですが、入居後に病院へ入院されました場合、一定期間を過ぎますと、一旦ご退所いただき次の方にベッドをお譲りいただく形になるかと...」

 

その後訪問した特養の施設でも、喫茶コーナがあるとかリハビリに熱心だとか、それぞれ良い面があったり、職員さんの表情がいまひとつ元気ないなぁとか入居者さんの様子を一切見せてもらえなかったなぁとか、自分たちとしての感想は都度あったのですが、私たちが気に入ろうと嫌がろうと、それ以前に、どこも「父親」だと告げると難しいと言われ、「男性はいろいろと難しいですし、女性の方が多いので...」という話に行き着き、「大勢お待ちいただいておりまして、入所の必要性が高い方を優先となります」という結論へ...

こうなったら、多少高くてもグループホームならどうかなと思いきや、こちらも待機者が多いと。そして自分たちが訪問したところは思い描いていた「家庭的で和やかな」雰囲気とは違い、「個室で、ご自宅のようにお部屋でお一人で好きなようにお過ごしいただけます」(つまり、一人で放って置かれるとも受け取れることかなと...)だとか、「最低額として、そちら様の場合は月額28万円以上となりますし、この他に理容代、訪問医療などもかかってきます」という情報の上で、「空きがありませんので、お待ちいただいてもいつになるかは分かりませんが」とピシャリ。(たまたまその施設がそうだっただけで、姉によるともっと感じの良いグループホームは多いそうです)

ちなみに、上記のリゾートホテル風施設も含め、「特養」の方は、試算一覧表によると、要介護度や世帯の所得にもよるのですが、月額基本料が5万円程〜8万円台が多くて、最大でも16万円程度でした(1割または2割負担かと、介護負担の段階で大きく違う)。

その、特養の中で1箇所、「男性待機者が今いないので、ぜひぜひうちへお申し込みください」と言ってもらえた施設は、スタッフが不足していて朝は2名のスタッフで80人を見ている、との話でした。

それを聞くと私などは、よく観に行っている宝塚歌劇宙組の舞台では80人以上の生徒さんがいつも登場されるので、ええ、あの人数のお年寄り(介護が必要な方が大半)を、朝の数時間で起こしてお手洗い等から食事させるところまでたった二人でサポートするって、え、ハードすぎるんですけど...

 と思ってしまったのです。

 

「でもそれは、あの夢の様なリゾートホテル風施設でも同じ。人手不足はどこも一緒だから」と姉に諭され、結局、そのリゾートホテル風施設(系列の2箇所)、男性の待機者がいないという、ちょっと心配だけど受け入れに熱心そうな施設の計3箇所に申し込み、グループホームは選択肢から外し、リハビリのための老健は大病院が経営しているという、送迎バスのある1箇所に申し込みました。

 

数週間後、申し込んだ老人保健施設の相談員の方が父の面接のために入院先へ来てくださったのですが...

「現状ですと、うちでは受け入れいたしかねます」とのお言葉。

施設に入る話ではなく、3ヶ月の機能訓練の申し込みにもかかわらず...当面受け入れてもらえないと。

理由を尋ねると、父は入院中体調が変動し、薬価の高いお薬を処方されていたため、「私どもでは、基本的にジェネリックに切り替え、お薬は必要最低限に減らす方向で対応いたしますし、医師による往診は頻繁には行えませんので、この様に体調がすぐれない状態ですと、厳しいかと...」とのこと。

確かに、もっともです。超高齢化で国民健康保険の赤字が増え続ける今、どこかで削らなければ、際限なく現役世代の負担が大きくなるだけなので..私も毎月高額の国保料を支払っているから、身にしみて分かるのです。

 

介護関係の記事では、「自分の人生を考え、親を施設に入れることも積極的に考えた方がいい」という内容が多いと思うんですが...

どの施設でも共通して仰ったのは「申し込み順に入所できるわけではなく、ご家族の事情などで入所がより必要な方を優先しています」ということ。はっきり聞いたわけではないんですが、優先の条件としては、虐待が疑われるとか、老老介護、身内がいない場合や介護者が病気であるなど、緊急を要する場合なのかもしれません。

 つまり、現実的には、ある程度経済的に余裕があって選択肢を持つ方か、あるいは、よほど困窮していたり切迫しているために優先順位の上がる方、どちらかでない限り、色んな意味で中間地点にいるご家族にとって、施設へ入れる決断をしても、その先に今度は施設側から選ばれるのを待つだけしかない..のですね。

 

そんなわけで、現在まだ体調が安定せず、結局二つ目の病院で過ごしている父。

落ち着いて考えてみれば、入院している限りは、体調が急変しても対応してもらえるし、毎日交互に見舞いに行けば、私たち姉妹の負担も公平だし自由も得られるので今は以前より、本人を含め家族も一息ついている状態なのですが、病室を見渡すと、どこの家庭も同じような状態なのだなぁと、他の患者さんご家族との交流で知ることになったのでした。

親(または配偶者)を家で見られない、でも施設には入れないというケースはどうしたら良いのか、今入院中の病院の相談員さんに聞いて、そこでいただいたアドバイスを含め、だいたい見えてきた道筋について、また次回に。