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hanihostamp penguinblog

のほほん、ペンギンライフ。

親と宝塚と私。

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介護用品を買うと、黒かネズミ色、銀色などの巨大な袋に入れてくださるんですが、透けなければいいのであれば、いっそサーモンピンクやミントグリーンの袋に入れて欲しいなと思ったりします。色が無理なら、おりたたむ時にシャカシャカゴワゴワするので、バレンタインチョコの外袋みたいなふんわり素材とまではいかなくても、少しだけシルキーな感じがあればありがたいんだけどなぁ...大人用のおむつなんだから隠さねばってことじゃなくて、せめてちょっとだけ夢のある袋に入れて欲しいなって...。日常の中で、郵便物に素敵な記念切手が貼られていたり、ちょっとした物を買った時に思いがけず素敵なラッピングにしてもらえた時に「ふふっ」となる感じ、小さなときめきが介護中だって欲しいなぁって。

 

最近はときめき成分の多くを宝塚歌劇団から摂取しているような具合なんですが、今、生活で新局面を迎えるにあたり、介護(現実)と宝塚(夢)との関係について整理するため振り返ってみます。

 

もともと4〜5年ほど前だったか、Web連載中のはるな檸檬さんの『ZUCCAXZUCA』がお気に入りで、登場するスターの名前や演目など全て意味不明ながらヅカオタの世界に興味津々でした。宝塚歌劇に、というよりファンの方が楽しそうで。

 

それが、 両親の入院が増えたり病状が深刻化して、「もうこれは地元に帰るしかないな」と判断して、10年ほど過ごした関東を離れて地元関西に戻ったことを機に宝塚とのご縁が始まった気がします。

 

まずは関東に住む友人の実家が宝塚にあり、親御さんが他界され今は空き家となり管理が大変で、「お墓参りの機会に風を通したり様子を見に行く」との話に興味を持ち、私もせっかく関西にいるからと訪問したのが2年ほど前。手塚治虫記念館と宝塚大劇場付近以外は案外、「乙女チックな宝塚」っぽくないんだなぁと思ったのが最初の接触。

 

次に宝塚を訪れたのは、毎年貸切公演に招待されているという兵庫の友人(非ヅカファン)から、関西に戻っているならご一緒にいかがと誘われて。小学生の頃以来の宝塚歌劇公演(宙組)でした。

1部のミュージカル『シェイクスピア』では舞台の床が回転して建物が動く仕組みにワクワクし、特に前から4列目で観た2部のショー『HOTEYES』で男女共(全部女性だけど)汗だくで激しく踊り歌い銀橋に並ぶ、ど派手なお姿に衝撃を受け、劇場そのものの華やかさにも心弾んだのでした。

風馬翔さんがお気に入りだという友人は、あっさり夕飯の支度に帰って行ったものの、私は一人キャトルレーヴやら花のみちをウロウロ、帰宅した友人から電話で「え、まだ帰ってないの〜」と引かれるほどに...

直後から『ZUCCAxZUCA』単行本全巻や宝塚関連本などを買い集めたのでした。

 

その後は両親とも入退院や手術があったり、絶望と希望のジェットコースターに乗っている感覚で、姉は仕事を休業状態、私は病室や待合でラフを描いて、家に帰ってパソコンで仕上げるという状態が続きました。

友人や仕事関係との約束をキャンセルしたり、行きたい映画や展覧会などは気付いたら期間が終わったりして、ヘロヘロになっていた頃、再び宝塚を訪問することに...

奇しくもそれは、母親がホスピスに入院した当日。

先述の、宝塚にある実家が空家になって遠方に住みながらの管理に困っていた友人が、実家の建物を葬儀社に貸して家族葬用の式場兼宿泊施設として使えるようにしたという話で、「一度自分の親の法事を行って体験してみる」とのことだったので、私も出席したのです。

法事の後、春間近の花のみちを歩きながら、可憐な花が好きだった母にここを見せたかったなと思ったり、その晩は『宝塚ホテル』に宿泊することになり、宝塚大劇場のオフィシャルホテルだったので、室内でスカイステージを見たり、部屋でケーキを食べたりひとりで夜の館内を散策(探検)したりして夢のような時間を過ごすも自分だけ楽しんでと罪悪感を覚えたりしつつ、その日を境に、宝塚大劇場や花のみちの光景が自分にとって特別な、ユートピアのようなイメージが焼きついたのでした。

 

 そして、宝塚ホテルに宿泊してから間もなく、母が他界。

覚悟していたものの、病院側からやんわり、しかしはっきり「迅速に葬儀の段取りを決めて引き払うように」促されたことで、悲しむよりも前に焦りと迷いが渦巻き、駅のホームの看板で見た葬儀社だとか近所で見かける葬儀場だとか、候補がぐるぐる...本人の意志により家族葬で親戚も呼ばずささやかにしたい、でも呼ばなくても近所の人は来てしまうのではないだろうか、近所の方を迎え入れたら親戚を呼ばないのは失礼だろうし..と混乱。結局、件の「葬儀社に宝塚の実家を貸している友人」に相談するうち「いっそ皆さんで宝塚に来て、うちで家族葬をしたら?」と。

それで通夜の日の朝、送迎車で家族一同宝塚へ向かったのでした。

「準備が整うまで、もしよければ観光でも...」と葬儀社の方に勧められ、劇場前で記念撮影をしたり、宝塚スターのポスターが壁に貼られたお店でランチをしたり。連日の睡眠不足や喪失感の反動なのか、どう見ても通夜の前とは思えぬ華やかなひと時なのでした。(兄がお店の方に了解を得て何枚も撮影した中の一枚)

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葬儀の後は、直後から各所への手続きや、家族葬をしたことで問い合わせが多かったことで挨拶回りをしたり、父の世話をするために実家に引っ越す準備などにバタバタし、同居直後に父が入院と、立て続けに色々あって悲しむ間もない日々で、あまりに忙しいので「ああ、葬儀の時は宝塚でゆっくり静かに休めた二日間だったね」と姉と回想してばかり。

 

そうして宝塚での思い出に浸るうち、ネットで検索したりしていて宙組エリザベート』をどうしても観たいと思い立ち、二階席の一番後ろから2列目のチケットをなんとか入手。舞台はかなり遠くてどなたもとっても小さく見えるものの、プロローグのコーラスからゾゾッと鳥肌が立つほど興奮。むしろ全体が見渡せるこの席素敵、と感動。

 

それまでも宙組を検索したりパンフレットを見返したり、朝夏さん真風さんをはじめ宙組の多くの方を全体的に好きになっていた私でしたが、『エリザベート』観劇後、劇的な変化が起こりまして。

そう、ルドルフを演じておられた澄輝さやとさんのことばかり考え、黒天使とトート様に翻弄されるダンスのシーンを(家のことに振り回され翻弄される自分と重ねたかったのかどうか...)何度も脳内で再生することになったのでした。

 

今までも結構、サッカー選手のイニエスタや歌手のボーイジョージが好きな他にも、普段出会う一般の人に「あ、いいな」と思うというか、男女問わずバイト先やコーヒーショップの人などにファン感情を抱くことがあったり、例えば知り合いのお子さんのバレエ教室の発表会に行った時、全然見知らぬお子さんに目が留まり、バレエが上手かどうかは分からぬまま、目で追わずにいられなくて、別の場面でも彼女をすぐに見つけたりして。終演後、彼女は他の生徒に混じってロビーでご家族や知人とお話しておられたけれど、まさか握手やサインを求めるわけにもいかないですし...

『ZUCCAxZUCA』にもそんなエピソードが出てきたんですが、一般人の方を素敵だと思っても、ブロマイドとか売ってないしファンレターも送れないし、雑誌のインタビューも読めないし、行くあてのない気持ちはシャボン玉のように儚いんですよね。

でも、宝塚のスターさんは、ちゃんとスターとして清く正しく存在しておられるので、「わぁ素敵〜好き〜」というファン感情の持って行き場があるというか。

 

とはいえ、そうこうしているうちに、同居する父の病気&認知度の低下が進み、介護関係に時間を取られ、夜中にも細々としたことで手を取られ仕事に支障が出るようになり、パソコンの不調も同時に起こり、こむら返りと胃痛でスッキリ眠れない日が続いていたのです。

そんなある日、ネット上で見つけたお稽古入りの澄輝さんのお姿に衝撃を受けたのでした(お洋服は架空で創作)。

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いつもの優しげな表情で持っておられる紙袋が(ファンの方の差し入れらしき、スターさんたちがいつもたくさん持ってらっしゃる様々な紙袋の中の一つ)、自分がデザインした商品だったのです。

数日後、またギャラリーの方撮影の画像がツイッター上に。そこでも自分がデザインした別配色の紙袋を持っておられて...うう。差し入れた方が偶然選ばれたにせよ、なんだか自分自身がバッグに化けてその場にいるような幸福感が...。

 

 誕生日に私が一番欲しがっていた、小林製薬の「コムレケア」(こむら返り予防の薬)とオペラグラスを贈ってくれた姉に、「しばらく旅に出たいけど、それは無理だろうから、せめて一泊、宙組の全国ツアーに行ってもいいかな」と切り出すと快諾してくれたので父を任せ、長年、松本清張記念館にも行きたかった念願の小倉へ行き、そこで澄輝さんの貴族姿(ロドリーゴ)も見届けて、初めて観て元気をもらったショー、『HOTEYES』を、全国ツアー版でもう一度観ることが出来て、海の幸やら色々美味しいものも食べて疲労回復、気力も回復したのでした。

 

息抜きをしたのもつかの間、年末ごろから数時間の外出もままならぬほどに父の体力と認知度がともに低下(要介護度は1から3へ)。

そんな中で、心待ちにしていた宙組大劇場公演、浅田次郎さん原作の『王妃の館』。父がデイケア(リハビリ)に出かける日なら13時公演を観終わってすぐ帰ればなんとか夕飯には間に合うし父を独りで待たせる時間も少なくて済むからと、万全を期して姉と見に行く予定日が近づいた頃、父が寝込み、看病の甲斐なく観劇予定当日に入院決定。数日間交代で看病していた姉も共倒れになり、気づけば病院で開演時間を迎えることに...

熱で朦朧とする姉が「宝塚、観てきて。今からでも間に合うなら私の分も..」と言うので、私は病院から猛ダッシュで向かい、息も絶え絶え大劇場へ。かろうじてショーには間に合い、ソーラン節など力みなぎる要素が満載、私の好きな翻弄される系のダンスシーンがあったり、宙組の美しいコーラスに胸が熱くなったり、澄輝さんのお姿も二階席から堪能し舞台写真等も買えて、そのおかげか、その後体調も崩さずに済んだのでした。

 

結局、父が入院して時間がぽっかりと空き仕事も順調だったので、姉を誘ったり別の日には競輪友達を誘い、ある時はこっそり一人でと、何度も『王妃の館』『VIVA!FESTA』を観に行ったのでした。笑いと美と暖かさとパワーを感じられるお芝居とショーで、どちらも良くて。そして、今までひそかに応援していただけなのに、ここへ来てファンレターを澄輝さんに送るという行動に出たのでした。(舞台の感想を言葉足らずにしたためた短めの作文のような...)

後日、郵便受けに澄輝さんからのお葉書が届いているのを見つけて、え、いつも不動産のチラシや請求書しか入っていない郵便受けが、こんなに素敵な箱に見えたことがあっただろうかと。いやぁ、こんなにワクワクしてお手紙を受け取るなんて、いつ以来だろう。雑誌のプレゼントに応募して当選した時のような、そんな素朴な喜びが蘇りました。

介護をしながら宝塚に親しむ、というのは、なんと両極端で、なんて健全なリフレッシュ法なのであろうかと。感動せずにはおれません。

 

姉と観劇した日、劇場で借りたオペラグラスを返し忘れたため、劇場に戻ったついでに、せっかくだから生まれて初めての「出待ち」をしてみたところ、その日は組総見というのか、整列したファンクラブ(会)の方たちの前へ、朝夏さん真風さん澄輝さん...宙組の人気男役さんたちが順番に続々と並ばれて...。日頃、病院や施設で超高齢者化社会を目の当たりにしすぎているせいか、眼前に発生した、若さ、美、和気藹々という要素すべてが非現実的で夢のような光景に見えたのでした。いつも介護で若さ(もはや若くないのに)を吸い取られる気がしていたのに、その場にいると逆に若さをチャージできそうな、近所の神社のご神木、大楠のそばへ行った時の澄んだ空気に似ている気がするなと...

「今まで部活動とかにも入ったことないし青春ってのがあんまりなかったから、介護がなかったら、私も思い切って会に入ったりしてあんな風に応援してみたかったかもなぁ〜フリーランスだから平日も動けるし..」とつぶやくと、姉は「いつかは出来るんじゃない?介護は永遠に続くわけじゃないし」と。

そこで気づいたのです。今目の前にいるスターさんを応援しようと思ったら、「いつか」では遅いのだと...

それからしばらく後のことでした。雪組の退団者発表や宙組のトップスター、朝夏まなとさん退団の発表...

姉との会話があっただけに、自分でもびっくりする位にショックを受けることに。

娘役さんの場合は、退団後すぐにそのままのお姿で舞台等で活躍されそうな気がして華やかな門出のイメージなのだけど、男役さんは今のお姿そのままではないし....

 

この数年、実際にはもう10年近く、親の介護や治療のために新幹線で頻繁に遠距離移動したり、高額な治療費を出したり、病院では診察待ちや手術待ち、検査待ちなどで何時間も、時には半日以上待ったり、それも連日だったりして。それらは案外ヅカファン(遠征したり、チケット代その他いろいろお金を使ったり、入り待ち出待ちしたり)に近い行動かもなと今になって思います。親の介護の場合、お茶会とかグッズ販売とか、特にときめくイベントはないですけど。

私も時と場合によってはしっかりファン活動する素質あったかも...なんて。

実際には、もっと時間的な自由があったなら、ひとり旅に出たり、ものづくりをしたり、以前のように別の趣味を楽しんでいただろうから、介護と宝塚は自分の中でワンセットなんだろうなと思うんですが、でも介護が終わったとしても、母や父の思い出(父は存命だけど)とセットになって、自分にとって憩いというか暖かなイメージのままなんだろうなと。

姉と目の当たりにしたタカラジェンヌの輝き。どなたも限りある存在だからこそ応援したくなるのだと気づくことで、今自分がそばにいるべき父の残り時間も有限で、介護は永久ではないのだと気づけました。今は父を見守り支える時だよなと。だからこそ、矛盾するようだけど、施設を利用したりして、宙組公演も出来るだけ観たいなと。姉も同居の私の負担を軽くするのを願って「どんどん観劇予定を入れて遠征にも行っておいで」と勧めてくれて。や、まぁそれは姉も働き出したので限度はあるんですが。

 

最近、苛立った時や疲れる出来事があると、2017ダイアリーの裏ポケットに入れた澄輝さんのポケットカレンダーをチラっと見るようにしていて、まさに、小さな御本尊状態なのですが、もう一方のポケットには私の心の師、ねずみ男のシビアな格言でもコピーして入れておこうと思っています。夢も大事だけど時にドライに強くふてぶてしくならねば。

以上、すんごい長文になって、知り合いの人には絶対読まれたくない内容になってしまった。いよいよクマ父(過去の記事参照)が退院して来ることで、新しい扉が開きそうな恐れと好奇心で綴ってしまいました。

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