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hanihostamp penguinblog

のほほん、ペンギンライフ。

三者面談に汗。

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入院中の父の退院の目処がたち、栄養士と薬剤師からお話があるので娘さんも同席してください、と病院から連絡を受け、指定された時間に病院へ行きました。同じ日時に母の診察も重なったので、父の方をわたしが担当することに… 

栄養士さんからは食事の指導やアドバイス、薬剤師さんからは入院後に処方されたお薬の説明とこれまで飲んでいて今後も引き続き飲むお薬の説明で、どちらも病室のベッドに患者と二人で腰掛けておとなしく説明を受ける、というものでした。

 

それらのお話が終わり、さて、その日の用事は終わったなと思って、診察中の母の方に合流して、その後の検査は姉にまかせて、とりあえず昼も食べてないしコンビニでカフェラテとチョコ菓子でも買って休憩しようかなと思ったら父担当の看護師さんから携帯に電話があり、「わたしからもお話があるのでこちらへ戻っていただけますか」と。

買ったカフェラテの飲み残しを片手に、呼ばれた談話室へ…

そこにはすでに父が腰掛けており、テーブルの上には父の病気にまつわる分厚い冊子が…

それは入院数日後から病室に置いてあり、パラパラとは見ていたものの、免許更新時の教則本みたいな感じで実はしっかりは読んでいなかったその冊子、テーブルで対面した看護師さんはおもむろに背表紙をこちらに見せるように立て中味を見えないように一ページ目を開いてらっしゃる。

なぁんか嫌な予感がするなぁと思ったら…

「それでは、退院の日程も決まりましたし、これからいくつか今回の病気について質問をさせていただきます」と。

びくぅっ。こういうの、苦手なんだけどなぁ。すがるように父を見るわたし。姿勢を正す父。

 

看護師さんは父に向かって、第一問。

「それでは○○さん。今回、ご自分が何の病気で入院されたか、その病名をご存知でしょうか。お答え下さい」

汗。わたしは症状は聞いていたものの、正確な病名が何なのかいまだに知らなかったんですが…

ぼやーっと口を開けて、半分寝ているような顔つきの、着ぐるみの熊のような姿の父が、聞こえているのかどうかわからない顔で動かないので、え、もしかして父がダメならわたしが答えるの?無理、どうしよ。心臓の具合が悪いとか、水がたまった的なことしか答えられないよぉ…

と思ったら父がよどみながら、不思議と専門用語も交えつつ答え、

「はい、正解です」と褒められた。

テキストを隠しながら、看護師さんの質問は続くのです。

「それでは、その病気には主にどんな症状がありますか。お答え下さい」

別に眉をしかめるでもなく、お地蔵さんのような表情でしばらくフリーズしたかと思うと…

「それはですね…足や顔がむくんだり、あとは、しんどいですね。それから…体重が増えました。そして血圧が…高くなりました…」

「はい、そうです」正解。その後も、どんどん問題が出されたのでした。

「では、この病気は、心臓がどのようになって起るものでしょうか。一体、からだの中でなにが起っているでしょうか」

「そうなると何が問題なのでしょうか」

「その症状は、何が原因で起ったと考えられますか」

「それでは、今まで○○さんが生活面で気をつけてこられたこと、今回もしかしてこれが病気の原因になってしまったと反省されることはそれぞれなんでしょうか」

「では伺います。そのような症状が再び起った場合は、どのような方法をとられますか」

「それでは、食事の中で一番気をつけるべきことはなんでしょうか」

「お風呂で注意する点はどういうところでしょうか」

数々の質問の中で、わたしが一番ビクッとしたのが、次の質問でした。

「では、○○さんに今回の病気にかかわるお薬をあらたに飲み始めていただいていますが、それらのお薬の効果はどんなものか理解されていますか。すべてお答え下さい。」

 

ひえ〜。こわい。

確かに、つい1時間程までに薬剤師さんから薬の説明はあったのです、副作用まで事細かく。しかし、合計10種類あり、そのうち今回あらたに出されたものは3種類だったものの、以前に出されたものと効果が重複するものもあり、途中で「まぁこれは、症状が治まったら外来で先生に相談の上で量を減らしたり飲むのをやめてもよいお薬です」とかいう備考だったり、「以前と同じお薬なんですが、これは前のブルーではなくグリーンのパッケージで容量が一粒の中で少なくなって、その代わり前は一錠だったのが今度から二錠になっています…」とかいうプチ情報があったりして、そういうのを延々聞いていると、賃貸借契約の重要事項説明を聞く時のように眠気が襲って来て、父はあきらかに途中から寝ていたはずなんですが…

 

しかしなんとかわたしもあやしい記憶をたどりつつ助け舟を出し、熊父は見事に正解を出したのでした。

上手い具合に必要なキーワードもちゃんと口にしていたし。

なんかすごい、と思いつつ、何かに似ていると思ったら、インコが飼い主の口癖を覚えていて、突然再現するあの様子だったのでした。

例えば動物園でおしゃべりする鳥にこちらが話しかけて、鳥が何か言葉を発するまでのあの変なズレというか…ああいう感じ。

少し誘い水のようなワードを耳元でささやくと、先生や看護師さんから何度も聞いたとおぼしき病気に関する注意事項や説明などを滔々と繰り返すような。情緒のこもらない言葉は、セキセイインコ等のアレそのものなのです。

 

そういえば同じようなことを別のジャンルでも父はやっていました。暇つぶしにと病室に差し入れた「懸賞付き間違い探し雑誌」 の、間違い探し自体はせずに、間違い探し用に描かれたイラスト(かわいらしい若向けの絵)をそっくりに、いや陰影を細かくリアルに描いて、オリジナルより深みとすごみが出ていたあの感じ。

そういえば昔からオードリーヘップバーンの写真などを鉛筆で精密模写していたなぁ、先生から説明を受けた話を細かく正確に覚えて口からお経のように出て来るのも、ちょっとそういう才能なのだろうか…と。

 

父がこたえてくれなければ、わたしが叱られていたかもしれないわけなので…久しぶりに頼もしくありがたく思えたひとときでした。

 

大きな病院にお世話になると、不調→検査→数値や画像で異常がなければ経過観察、異常が数値化、視角化されれば原因究明と治療、または生活指導やリハビリという流れになっていて、その前に、不調があると先に近所のかかりつけ医にお世話になるものの、検査が詳細に出来ないこともあって原因が分からぬままになって、結局悪化して救急か紹介状で大病院へ…というくり返し。

なかなか生きるのも死ぬのも大変だな…と気が遠くなりそうなワタシ。

以前、他の家族のために、自宅で医療用具を使う練習(震災や事故時の備えなどまで説明を受けたり)をしたときに、姉とふたりで看護師さんの前で実践してチェックしていただくものの、視線を感じて動きが硬くなり、ハサミの使い方だとか段取りなどが明らかに間違っていたりして、「あわわ」となるようなことがありましたが、今回のような質問にはさらに緊張します。一見ちゃんとしているように見えて人の話を半分以上聞いていない、そそっかしいのと無責任な自分としては焦るわけです。例えば連れと二人で道に迷い、通りすがりの誰かに行き方を教わる時、その説明を「相手が聞いているだろう」とたかをくくってほとんど聞かない、あの感じ。そのツケが思いがけないところで返って来るとは…

 

ああ、父のように泰然自若でありたい。

と思ったら、帰りがけに「今日はシャワー浴びてくださいね」と看護師さんに促され、足取りも重く「ついに…観念するしかないのかなぁ。いよいよ今日はシャワーしないといけないのか…」と項垂れる熊なのでした。

そういえば父は入院当初、絶対安静と医師から言われ、「僕が恐れている最悪の結果が訪れるかもしれません」としきりに口にしていたわけなのですが、それは「死」ではなく「カテーテル検査」を指していたし、カテーテル検査が思いのほか楽に終わり、ご機嫌になった父の次の不安は「大部屋への移動がこわい。覚悟を決めないと…」というものでしたし。

まるで、テレビ東京の『路線バスの旅』で旅館(民宿)宿泊を嫌がりホテルを主張する蛭子さんにダブるなぁ…

姉によると昔の父とはまったくキャラが違うそうで、昔のままだったらこんなに世話できてないわ〜とのことなので、脳梗塞や老いが良い方へ働いた好例なのかなと。

いやぁ、もはや自分の父とは思えないけど、一体誰なのかというと、身近な存在ではあるわけで。面白い熊さんだなぁ。

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