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hanihostamp penguinblog

のほほん、ペンギンライフ。

ご迷惑をおかけしております。

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ご近所問題って、一戸建てに限らず、集合住宅でも色々複雑なんですね。分譲だと気軽に引っ越すわけにもいかないので、尚更。

 

上の10個の長方形は、集合住宅一階部分の10戸を表したもので、右から4軒目、「Here」と書かれた黄色いスペースが、Y夫妻の住まいです。仮に知人としておきます。

 

Y夫人は、明るく気取らない性格で、マンション内に顔見知りが多い。

かつて接客業をしていた関係からか、人の顔を覚えるのが得意で、スーパーや病院で顔を合わせては、住人らと次々に会話をして、各家庭の事情を知ることができるらしい。

完璧に見えるご家庭にも何かが必ずある。というより、世間話として自慢をしづらい場面では、誰しも「何々で困っていて〜トホホですわ」と言いがちなのだが、それはともかく、よそ様の事情を知ることで、Y夫人は「みんなも随分苦労しているんだなぁ」と思い、自分の悩みや境遇、お金や将来への不安を軽減しているらしい。本人は認めないが、他人のプチ不幸が大好物なところ、話に食いつく様子は徹子の部屋の黒柳さんみたい…あまりに無邪気なので相手は警戒しないで話してしまうようだ。世間話が苦手なわたしには想像もできないけれど、Y夫人の仕入れた話につい、聞き耳を立てるワタシも徹子状態か。

 

管理人さんが常駐で、いつも数人のスタッフが敷地内の隅々まで清掃している、手入れの行き届いた快適な巨大マンション。スタイリッシュではないし老朽化しているが、改修工事なども行われ見た目にはきれいで、なにより交通の便がよく、住人の定着率も高い一方で一旦売りに出されると早めに売れるので、人の入れ替わりも適度にある、そんなマンション。上の10戸は、その一角にある「庭付き住戸」の並びです。

 

黄色い部屋のY夫人は、ガーデニングが趣味で、庭で季節の花や野菜作りを楽しんでいる。屋根つきのベランダ部分は雨でもほとんど、洗濯物が濡れないところもお気に入り。

庭の向こうは、金網越しにマンション側が設置した、外からの目線を遮る植え込みを挟んできれいに刈られた共用庭の芝生が広がり、室内からの景色は一見、高原のよう…(実際はお向かいの棟の玄関が奥に見えるのだが)という恵まれた環境であった。

 

が、この数ヶ月、庭の隅に、あるいは洗濯物の付近に猫の糞が残されることが増えたという。

「隣の奥さんが、いつも庭で野良猫に餌をやっているから」だそうで、猫は餌をくれる家の隣をトイレに決めて、通行がてら用を足すらしい。

始めの頃は、隣の奥さんにスーパーで会っても、にこやかに挨拶をする彼女に猫の件を言い出せなかったが、ある日、キャットフードを抱えてスーパーから帰って来る隣人を見かけて、さすがにたまりかねて声をかけた。

「奥さん、猫に餌をやるなら、家の中で飼ってもらえない?お宅で餌を食べたあと、いつも猫がうちの庭で糞やおしっこをしていくのよ。臭いがすごくて。夏場で窓を開けていたら強烈なの。このあいだは座布団の上にされて…」

というようなことを、できるだけソフトに伝えたところ、

「あらぁ、でもね、一階の誰々さんも餌をあげているし、猫好きなひとはこの辺り多いのよ。奥さんも餌をあげたら可愛いわよ。一緒にどう?」

むしろ、「猫サークルへの勧誘」をされたそうだ。

その後、何度か顔を合わせる度に、それとなく抗議するも、「ウチでは飼えないので、ごめんなさい。でも猫を守ってあげたいから。でも、ご迷惑なのは申し訳ないし、せめて今買っているキャットフードがなくなるまではあげさせてください。なくなったらやめるから」

そう約束はしてくれたものの、「でも猫はかわいいから奥さんも餌をあげてみて」と誘われて終わるのだとか。

管理人さんに告げるも、「困りましたねぇ。よほど大変な事態になったら、こちらからお話をしてみます」とのお返事。そもそも、ノラ猫以前に、ペット禁止の敷地内では、多くの人が大小様々な犬を散歩させている。禁止してもすでに飼っているものはどうにもならないので、ある時自治会の会議で、「一代限り、ペット飼育は容認」の措置がとられたという。あるいは、「ベランダに、非常経路をふさぐような家具、荷物等を置くのは禁止」されているにもかかわらず、もう何年も、何十年も、L時型の広いベランダに、箪笥や置物がびっしり並んでいるお宅もあるが、何度注意しても撤去されないという。

しかし、夏祭りのフィナーレ、盆踊りの音がうるさいとの苦情があり、今年の夏はごく小さな音量で曲を流したというから、苦情を言う派と、自分の思いを貫く派は、物事によって、勢力が違うらしい。犬猫を可愛がる勢力が強いそのマンションでは、糞害は庭のある一階の一部に限られるから、さらに少数派なのだ。

 

それからまたひと月ほど経過。

相変わらず、数日に一度、猫に庭をトイレ利用されていたY夫人は、「他に被害にあっているひとはいないか」と思い立ち、通路で顔を合わせた、上の図の左から2軒目、グレーの家の住人に尋ねてみた。

「うちも!お隣が餌をやっているから、うちの庭で糞をされるの。それでこの前、インターフォン鳴らして『困っています』と伝えて、謝ってはもらえたんだけど、それで収まるかどうか…」とのこと。

その後、しばらくしてY夫人のもとへ、件の、左から3軒目の住人(餌やりをしていた方)が訪ねて来た。

「お宅にも猫が糞をしていたようで、失礼しました」と菓子折りを渡された。

「いえ、そんなことしてもらっても…」とY夫人。

「ところで、聞いて欲しい話が。うちは確かに猫の件でご迷惑をかけましたが、でも、お隣さん、夜にしょっちゅう、家族でひどい喧嘩をされていて、その声や激しい物音が響いてすごく怖くて。いつ事件に巻き込まれるんじゃないかと不安なんです。Yさん、あちらと親しいご様子なので、なにかご存知なら教えていただけないでしょうか」と、相談されたのだった。

「いや、特別親しいわけでは…うちには事情は分からないので、よほどの場合は管理人さんに言うしかないでしょうね」としか言えなかった。Y夫人は本人から相談を受けていたので家庭の事情は知っていたが、その隣人に告げるわけにはいかず、また口にしたところで解決はしないはずだった。

 

 別の日。Y夫人は、ご近所の、また別のお宅の状況を知ろうと、左隣(図の紫の家)の住人と顔を合わせたタイミングで尋ねてみた。

「お宅の庭やベランダには、猫の糞されてません?」

すると、「それよりお隣の庭が荒れ放題で、そこで蚊が大量に発生してうちの方に飛んで来るんです。草自体もうちの庭に網越しにのびて来るし、庭が荒れているから子どもたちがペットボトルやゴミを放り投げていくんですよ。何度か手入れするようにお願いしたり、マンションの庭木剪定の職人さんに声かけたらどうかしらと言っても、聞き入れてくれなくて。どうしたらいいやら、困ってしまって」という話がかえってきたという。

しかし、その「困った庭」(緑のストライプのお宅)の住人からは、「隣(紫の家)の住人が、いつも楽器の練習をしていて、その音がずっと気になっていて」と聞かされていたY夫人。

 

「穏やかに見えるこのマンションにも、色んな人がいるものよ」と、遠い目(しかしどこか嬉しげ?)のY夫人なのですが…わたしはふと、頷くのをやめて首をかしげる。

ちょっと待った。

Y夫人の悩みは、猫の糞より、もっと深刻なものがあったのではなかったっけ。

深夜にねずみが出て、食品の袋に穴を開けられたり中味が散らばったり。食品を隠すと今度は石けんをかじられたり、朝起きて飲む予定だった薬をテーブルから袋ごと持ち去られたり。対策をするとしばらくナリをひそめるものの、忘れた頃に出没して部屋を物色されるので、うんざりするし対策(追い出すための)用品などの実費もばかにならないのだとか。

猫を一番飼うべきは、Y宅なのでは?

もしくは、野良猫を家に招いて、おトイレも設置しておいた上で、餌を食べてもらいつつ一晩くらい泊まってもらって、室内をパトロールしてもらえば、直接どうこうしなくても、猫のニオイがあればネズミ一家も引っ越してくれるのではないだろうか。

 

 さて。Y夫妻のマンションのご近所問題の件を聞き、また、それぞれ家庭の事情やらというのも聞いた上で、「誰しもいろいろあるんだなぁ」と思った次第。 

 しかし結論として、「どこの家も、近所の行動になんらかの迷惑をうけていて、また反対に、自分の行動も知らぬ間に近所に迷惑をかけているのかもな」ということが分かったのでした。

そう、Y家の夫は、休日に大音量で窓を全開の状態で、カラオケの練習をしているのです。マイクは使っていないにしても、よく響く声で。

ともあれ、皆が不満や困りごとを腹にためずに言い合える間は、なんだかんだやり過ごせるのでは、と思ったり。こんなご近所事情なら何か異変があったときには誰かが気づいてくれるだろうなと、頼もしく思えたり。いや、住めるかと言われたら遠慮したいような気もしますが、いっそすべてをさらけ出して人目を気にしなければ…安全快適?

 

さて。この話を聞いた日、その日Y家の隣の「猫餌奥さん」に何度目かのソフト抗議をしたところ、奥さんはこう仰ったとか。

「今日で餌をあげるのは最後にしますから、どうか今日だけは許して。今日で最後だから、ねっ」と。

「これで猫問題は解決したわ〜」とY夫人。晴れ晴れした笑顔なんだけれども。

え、そうなのかなぁ…人が良いのか呑気なのか。なかなかどうして、隣のご夫人はツワモノだな。

 

*猫の餌やり問題が浮上した背景には、マンションの所在地にほど近い空き地に有志が設置していた猫のための小屋が、ある時地権者?により撤去されたことで、猫が子育てなどをする場所に困り、マンションのベランダや床下へ入るようになったらしい。それまでは、猫たちは穏やかに暮らし、有志が世話することで住人との距離も保てていたのに、それが崩れてしまったようです。

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