hanihostamp penguinblog

のほほん、ペンギンライフ。

熊の暮らし。

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もう何年も前に、父が脳梗塞を発症して、動脈瘤の手術をする際に医師から告げられたのは、「血管を本来の位置と離れたところから強引に引っぱって来てつなぐことになりますので、術後、性格が変わってしまうことがあるかもしれません」ということでした。(医学的に詳しい話は再現できずですが…)

短気になったり、好みの食べ物が変わったり、あるいは元の性格がさらに強くあらわれるかもしれない、とのことだったので、家族は手術後の父がどんな人物になって戻って来るのか、こわごわ迎えたものでした。SF映画やホラー映画の見過ぎかもしれないけれど…それこそ、別人格になっていたらどうしよ〜という怖さ。

結果…生還した父は、医師の予言どおり、以前の父のままではありませんでした。

 

食の好みが変わって、それも周期的にコロコロ変わるのでめまぐるしく、そして性格も超せっかちになって同行の家族の存在を忘れてずんずん先へ行ってしまったり、テレビ番組やタレント、歌手などに対して好き嫌いが激しくなったり、テンションが低いかと思ったら、突然感情的になったりふさぎこんだり、そして以前からあった、自己中心的な考え方がさらに強調されたり…

とはいえ、別人になるほどの変化ではなかったので…おお、こう来たか、的なものでした。

もの静かで穏やかな様子もあり、表面上はおっとり見えるので、以前と変わりないと思い込んだ昔からの知り合いの方は、突然激昂したり雄弁をふるう父の様子に出くわして、呆気にとられることも多々あったようで…家族にとっては、苦笑いつきのコメディー的光景でした。

He is not what used to be. 

そんな英語を習ったことがありました、そういえば。 

 

けれども、わたしにとって心がざわついたのは、食事の際の態度でした。

脳梗塞で視界が狭くなった、ということもあってか、いわゆる三角食べ(ご飯、みそ汁、おかずを順序よく食べる)を放棄して、一つずつ手近な皿から「片付ける」ように食べるスタイルに変化したのです。

その結果、煮物や手の込んだ料理を作っても、好みではないと2口ほど口にして(あるいは口もつけずに)皿を遠ざけ、白いご飯に納豆と佃煮をのせたものだけを黙々と食べたり。

かと思えば、水にさらしてしゃきっとさせただけのレタスを皿に盛ったものを、「おいしい。あ〜、ほんっとにおいしいなぁ」と、モリモリ食べたり…

 

ある時、夕方の情報番組かニュースだかで、どこかの動物園で新鮮な笹の葉しか食べず、鮮度が高いものも選り好みするというパンダに飼育員さんが手を焼いている…という映像が流れていて、あれ…なんか既視感。なんだっけ、この感じ…

飼育員さんが苦労して調達した笹の葉を手にして、パンダが一口食べてポイッと放り投げる姿に、父の姿が重なったのでした。

 

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ああ、そっくりだ…

しかし、父の場合、どっちかというと…熊かな。

本物の熊ではなく、着ぐるみに限りなく近い熊というか。かわいい熊ではなく、ヘタウマ的風貌のクマというか…

 

目薬をさすときには、必ず床に寝転ばないとさせないので、デイサービスなどに出かけた際には、うまく出来ないそうです。その姿がこんな感じ。

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熊と化した父は、昔と変わらぬ部分ももちろん残っていて、たとえば松本清張の短編や歴史小説を古本市などで買って来て読んだり、囲碁番組や、五木ひろしさん出演の歌謡ショーを見たりもしますが、しかし、長年喜怒哀楽の感情をすべて注いで来た阪神タイガースへの情熱や関心は失ったようで「昨日、サヨナラ勝ちしたって?」と話題を振っても、反応ナシに…。

そう、食の好みや性格の変化より、むしろ、コミュニケーションの取りづらさ、反応の薄さ、が顕著になったというか。

もちろん会話は普通に成立するし、こちらが質問すれば、最近は吉田松陰の話などを仔細に語ってくれるのですが、会話となると感情がこもらないというか。日本語でしゃべっているのに、なんだか声が届かないような…

 

しかしこれらは、病気や手術のせい、というより、そもそも「老い」は、このように人を変化させるものなんだろうなぁ、と最近思うように認知症や老人性うつ、などの関係も多少あるかも、とは思いますが現時点では診断されず)

見ていてハラハラもするし間延びするようでもあり、でも、たまに、感情のこもった顔で、手料理をおいしいと言ってくれるとなんだか嬉しくなってしまう、熊さんマジック。

それにしても、熊化した老人の心境とはいかなるものか。

時おり、絶望的な心境を口にすることもありつつ、それでも、せっせと朝から整骨院へ出かけ(国保料負担がかさむんだから無駄に行かないで〜という個人的な本音はなかなか言えない…)、各地の図書館へ出かけ、カラオケスナックへ出かけ、全体的に飄々と暮らしているように見えます。

先人(存命だけど)のおかげでわたしは、自分もいつか飄々老人、パンダ的振る舞い人になればよいか…と思えてきて、病気も老いもなんだか怖くなくないような気がするのです。

*↓病後、というか年を重ねて?好きになった『笑点』鑑賞中の熊さん。

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