読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

hanihostamp penguinblog

のほほん、ペンギンライフ。

確執と絶縁の顛末。

f:id:shijimi25:20141116185329p:plain

久しぶりに、『トムとジェリー』という、猫とネズミのアニメを観ました。

100円ショップ・キャンドゥで買った「世界名作童話アニメDVD」の一枚です。

子どもの頃は、猫のトムがネズミのジェリーを虐めようとするも、見た目にも可愛くて賢いジェリーの逆襲に遭い、こてんぱんにやり返される…というパターンにトムが可哀想だなぁと思っていたんですが…今回見直して、記憶って不確かなんだと愕然。

ジェリーは「かよわい被害者面」などせず、視聴者の同情を引くでもなく、トムと果敢に戦って、勝利に調子に乗っている最中にトムから報復されたり。時には第三者を巻き込むバトルの際に二人が共闘したり共に命からがら逃げる、なんてこともあって「ああ、トムとジェリーは本当に〈仲良く喧嘩〉しているなぁ。二匹は敵ではなく、コンビだった」と今更ながら…

 

それはそうと、人間の大人の喧嘩も、結構そこかしこで勃発中。

発明者と企業や、作家と編集者(出版社)、芸能人と事務所、著名人同士、創業家のきょうだい、漫才のコンビ、バンドグループ…

最近はブログやツイッターでやり取りが実況中継されるかたちになったりして…火種が増えたような気もしますが。

社会的立場のある大人同士は「仲良く喧嘩」という訳にはいかないようです。

確執や絶縁話は、有名な人、大きなお金の周辺にいる人、注目を浴びる立場のひと、成功者、が体験する、避けがたい台風のようなものかなぁ、と。

暴風の中にいる状態とはどんな感じだろうかと、そのようなテーマの作品(ノンフィクション)は、つい気になってしまいます。

 

確執 その1…室生犀星高村智恵子

10代の頃、中学生だったか小学生だったか、国語の試験問題か教科書で登場した数行に衝撃を受けたのが、室生犀星の文章。彼が高村光太郎を訪問した際に応対した、智恵子の冷淡で見下したような態度を描写したものでした。

智恵子抄』で知っているつもりのイメージをくつがえされたのと、大の大人が体裁をとりつくろうことなく公の場で相手をあしざまに書くものなのか…という驚き。

ネット検索により、その文章は『我が愛する詩人の伝記』という文庫に収められていると判明。

しかし、昨年読んだ津村節子さんの『智恵子飛ぶ』で、積年の謎が解けた気がしました。

智恵子は女として光太郎に愛されたものの、ひとりの画家としては夫に認められていないことに傷つき、また光太郎の才能に焦燥感を募らせ、さらに実家をめぐる経済的困窮なども負担になっていたようで、犀星の訪問時に愛想を振りまくどころではなかったはずです。(だから、二人の関係は確執ではないのですが、印象的な「他者攻撃」表現だったので、挙げています)

津村さんご自身も、「夫は自分の作品をおそらくほとんど読んでいないと思う」というようなことを何度か書いておられて、傑出した才能の作家、吉村昭氏との夫婦生活では智恵子の苦悩に共感するところがあったのかもなぁ…と強く印象に残った一冊。

 

確執 その2…有吉佐和子神彰夫妻と、神の会社の幹部社員

こうして紹介するときに、有吉さんの名前を先に出すこと自体が関係の破綻の原因そのものを示唆しているのかもしれませんが…

戦後、暗く沈みがちな日本の人たちを元気づけようと、海外から一流の芸術家(合唱団やバレエ団、サーカス団、歌手、ジャズバンド)を招いて興行する会社を仲間と立ち上げ、そのカリスマ性と行動力で成功を収め、破天荒さで周囲を魅了した、神彰

その活躍の頂点で、人気実力ともある作家の有吉佐和子と電撃結婚したことから、片腕や兄弟のように思って来た社員らとの間に軋轢が生まれ、彼らが会社を去ってゆく…

その顛末を、有吉さんと神さんの死後、関係者へのインタビューから描いたのが『虚業成れりー「呼び屋」神彰の生涯』です。


この本では室生犀星による「智恵子描写」のように、有吉佐和子が冷淡に、相手を見下す態度をとる女性として語られる箇所があるものの、全体を通して読むと、確執はもともと男同士の敬愛の情があったからこそ起っており、有吉さんの激しい態度も作家としての強烈な個性とも読めるので、娘の有吉玉青さん含め、神さん以下この本の登場人物をみんな少しずつ好きになってしまいます。

本書では様々な興行のエピソードも充実していて、イブ・モンタンが来日すると言っていたのに延期して、結局来なかった苦労話等も面白いです。

 

確執 その3… 岡嶋二人 

片方がアイデアを出し、もう片方がそれを小説にする、という形で合作したミステリーで賞をとってから、プロとして歩み出した二人が、締め切りに追われ売れっ子人気作家になるにつれ、執筆担当ひとりに負担がかかることで、やがて関係が破綻する。確執…とは呼べないものの、仲間だった二人の距離が大きくなって避けられなかった訣別が切なく、同時に読み物としてとても面白い。

破局に見える関係は、悲劇ではないと教えてくれる一冊。


確執 その4… 見坊豪紀山田忠雄

まだ読んでいませんが、「確執」というキーワードで見つけた一冊。

『明解国語辞典』を共に作った二人が、互いの道を進み、のちに『三省堂国語辞典』と『新明解国語辞典』をそれぞれ出し、その後袂を分かつまでの顛末が書かれているようです。

なぜ、二人が訣別したかという点が読みどころとなっているとか。いずれにしても、対立や訣別は、仕事においては両者の秀でた能力だからこその運命なのかもしれない、と予感できます。

確執を避けた人たち… アンヴィル

確執や絶縁が、強烈な光を浴びた人が生み出す暗く長い影のようなものだとしたら、大金や名声、栄光を得なかったことで、関係の破綻を免れ未来を共に歩む人たちもいるのかもしれない。

成功や名声には、セットのように確執や絶縁もついて来ると思うと怖いですが、頂点を極めなかったことで破局を逃れたヘヴィメタルバンド、「アンヴィル」のメンバーの生き方や家族との関係には、切ないながら猛烈に憧れます。わたしは映画館で観ましたが、amazonのレビューでは33件、ほぼ星4〜5つ評価となっていて嬉しい。

********

 

確執のきっかけは…

①才能を持つ同志の、方向性の違い

②助け合っていた男同士の友情からはじまった仕事関係の中に、女性が入ってくる(もしくは女性同士の信頼関係の中に、男性が入って来る)

③大金やおおきな権利が発生することによる、関係者それぞれの主張

④自分が相手より多くの負担をしいられながらも、その関係のために心身を捧げて来たことへの、相手の無理解

 

でしょうか。

 

②は、ビートルズの場合の、ジョンとヨーコの出会い、結婚。また、数年前、女性演歌歌手の方もご結婚の後で事務所との訣別騒動がありました…

ただ、③の、お金だけじゃなく、その人のために自分がこれだけ頑張った、という思いと行動に対しての、「ねぎらい、感謝、評価」が示されなかった④の場合の決裂というのが、一番多いのかもしれません。

野球選手のオフシーズンの動向を見ていてもよく思うんですが…そこが人間の切ないところですね。

 

いずれにしても、人と人はいつか必ず別れる。確執してもしなくても。別れるまでは、仲が良かった時もいい時もあった。そう思えばいいじゃないか、と思うのでありました。

広告を非表示にする