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hanihostamp penguinblog

のほほん、ペンギンライフ。

失踪する小説、漫画。その2

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昨日、わたしは「失踪するなら、顔がささない方がいいから、ある程度観光地がよい…」というようなことを書きました。

その記事を見てくれた従姉から、「文中にあった〈顔がささない〉という言葉、何となく意味は分かるものの、あまり聞いたことないのでググりました。」とコメントをもらいました。

実は、従姉の「ググりました」という言葉を、わたしも恥ずかしながら検索しました(笑)(Googleに限定せずネットで検索すること、だそうです)。

さて、顔がさす、というのは京都(関西?)特有の言い回しらしくて、全国的ではないとか。従姉とは生まれ育った土地が違うので、こういうお知らせは新鮮ですね。

外で知り合いに会う、または誰かに見られる、近所で噂される、というようなニュアンスで使うのですが…地元では、「あら〜、こないだはあそこでお見かけしましたよ」だとか、「誰々さんとご一緒でしたね」などと、後から言われるたびに、冷や汗。狭い町では、どこでもありそうな話ですが。

そんなわけで、今は顔のささない土地で暮らしているわたしも、昔の知り合いから見れば、まさに「失踪中」みたいなものかもしれません。子ども時代を過ごした家を売って、両親も今は交通の便のよい町で暮らしているので、親しくない人からしたら、「あの一家はどこに…」状態かと…。

 

さて。前回につづき、大人の失踪(蒸発)を扱った小説、漫画のなかで、印象的な作品をあげてみます。

失踪する小説 その8 『遅れた時計』 吉村 昭   (する側 される側目線)

吉村昭さんの作品には、死や失踪を扱うものが多いとは思うのですが、うちにある中では、この短編集かな、と。心をしめつけるのに、読後は不思議と心ほぐれます。亭主のいる女性との駆け落ちの話、20以上年上の女性と暮らし出した予備校生を案ずる叔父目線の話。夫が出張に出たきり失踪し、デパートの保安課員(万引き監視)の仕事で生計を立てる女性の話など。文庫の裏表紙には「人生の小宇宙を作り出す秀作10篇」との紹介文あり。

Amazon.co.jp: 遅れた時計 (中公文庫): 吉村 昭: 本

 

失踪する小説 その9 『きのうの世界』上 下 恩田陸   (第三者目線?)

図書館で借りたので、失踪者と主人公の関係など細部は思い出せないんですが…

失踪にまつわる小説や漫画の魅力のひとつは、捜す過程での「聞き込み」「知らない町の調査」という形をとった「散策」疑似体験かな、と思っていまして。恩田さんのこの作品は、読後すっきりするかどうかは別にして、一番の主役は、塔と水路のある不思議な町そのものだとすると、謎解きという名目で旅を続けるみたいでワクワクします。

Amazon.co.jp: きのうの世界(上) (講談社文庫): 恩田 陸: 本

 

(番外)失踪する小説 その10 『ノラや』 内田百閒   (される側目線)

苦虫を噛み潰したような顔の中に、無邪気な少年の面影が残る、愛すべき随筆家、百閒先生。一見無愛想で飄々とした語り口が好きで、『立腹帖』や『阿呆列車』(彼は元祖「乗り鉄」だった)も愛読していますが、失踪…といえば、これ。失踪するのは猫。気難しい作家が一匹の猫と出会い、滑稽なほど振り回される様子や、失踪後は感情をむき出しにして、近所の目もはばからず必死に猫を捜し続ける様子に、たじろぎつつ圧倒される…こんな風に何かに激しくなれるというのはすごいなぁと。その顛末に脱帽&脱力。

Amazon.co.jp: ノラや (中公文庫): 内田 百けん: 本

 

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失踪する漫画 その1 『アンダーカレント』 豊田徹也   (される側目線)

豊田さんの作品の登場人物は老若男女みんな、がさつ、不器用、無愛想、不機嫌、うっとおしい、などなど…どんな人も、凸凹した部分ごとチャーミングです。

本作は、夫に突然失踪された女性が、その消息を気にかけつつ、一方、子どもの頃に封印した記憶に苛まれながら、周囲の人との交流や新たな出会いの中で笑い、怒り、毎日の銭湯営業に汗を流す日々がユーモアを交えて生き生きと描かれています。

「映画一本よりなお深い、至福の漫画体験を約束します」との紹介文通り、全体的に素晴らしいのですが…印象的なのは、夫の失踪理由。やるせないのに、あまりに現代的な理由に、自分自身、どこか心当たりがあってぎくりとしつつ、納得。

Amazon.co.jp: アンダーカレント アフタヌーンKCDX: 豊田 徹也: 本

 

失踪する漫画 その2 『兄、帰る』 近藤ようこ   (される側目線)

 ここまで挙げてきた、失踪を扱った小説と漫画の中で、失踪理由に最も親近感を持った作品です。わたしがもともと持っていた近藤さんの『ルームメイト』や『見晴らしが丘にて』という作品を友人に貸したところ、以降、向こうが近藤さんの作品を買い集めるようになり、ついに蔵書数が逆転し自分が借りる側に…。そのうちの一冊です。

家族や婚約者に何も告げず失踪した男性の訃報。それが物語のはじまりで、遺された家族と、宙ぶらりんになった婚約者が、それぞれ彼の足跡をたどり失踪の理由を求めます。失踪後に彼が暮らした町で撮られた笑顔の写真や、親しくしていた女性の存在。読みながら婚約者の立場になって辛いのですが…最後、不慮の死を迎える直前の彼の心境にたどり着く頃には、うわ〜…そうだったのかぁ〜、と救われる涙じんわりの結末。

Amazon.co.jp: 兄帰る (ビッグコミックススペシャル): 近藤 ようこ: 本

 

失踪する漫画 その3 『百物語』 杉浦日向子   (される側目線)

読み返しすぎてボロボロになった、枕元の新潮文庫。百物語だからこそ、の、物語99篇が収録されています。この中に、失踪、神隠しにまつわる話はいくつもあるのですが、これまでに挙げた小説や漫画と失踪の理由や状況が違い、人知の及ばない力、この世のものではない何かのしわざの色合いが濃く、とはいえ、おそろしさより人情味やおかしみ、懐かしさが漂う作品。一番好きなのは、信州のとある藩の侍が予告した日に向け家人に諸々準備させ、当日、沐浴し無刀で奥座敷へこもり、誰も近づかぬよう言いつける。その後…彼は忽然と姿を消して…という『天狗になりしという話』。わずか数ページで説明も少ないだけに、タイトル自体が物語の要になっていて、余白を想像するから却って余韻が強いのです…

「お見舞いに必ず贈呈する一冊」、とどなたかがネット上で書いておられましたが、ナイスアイデア。わたしも自分が入院するとき持参しようかな。

杉浦日向子『百物語』|新潮社

 

ああ、説明が長くなりすぎてしまった…

次回、失踪する小説、漫画のラストは、脱線して番外編を。

今わたし、まったく失踪する必要はないんですが、目下、山積する雑務から一瞬心を解き放とうと現実逃避中〜

 

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