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hanihostamp penguinblog

のほほん、ペンギンライフ。

失踪する小説、漫画。

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もし、よんどころない事情で自分が失踪するとしたら、まずここへ行こうと決めている町があります。

そこから転々と、こんな風に移動していって、万一何かあったら反対の方角へ向かってあの海辺の町へ…と、追跡を逃れるために、何手か先の行程まで想像してみたりして。

その際、失踪に新幹線は似合わないから、ぜひ在来線で移動しなきゃね、とか季節は夏ではなく、やはり晩秋か冬に出発した方がよいよね、とか。顔がささない方がよいから程よく観光地がよいなぁ、とか。和菓子がおいしいだろうから、城下町がいいよね…となると、温泉はやはりマストでしょう…などなど。

あれ、なんか旅計画に変わってきたような…というのが、いつものパターン。

わたしはフリーランスで、公私ともに組織やグループに所属せず、家族や友人とも半月〜ひと月近く連絡しないことも多くて、デザインの請負い仕事はどこにいてもネット回線があれば可能で、どの取引先とも打ち合わせはほぼ不要で、メールや電話のやり取りで進む、という、失踪の必要がない、普段からどこにいてもどこにも居ないような、根無し草のような暮らしをしているのでした。

ただ、自分の生活圏から、ある時姿を消したひとや一晩で家族ごと町から去ってしまった方々、失踪などせずメールアドレスも変わらないのに突然連絡が途絶えて縁遠くなったひと、探せば見つかるだろうけれど二度と会うことはないだろうひとなど…〈missing〉は、自身や身近では起こらずとも、なんらかの形では体験しているのです。

だからかどうか、小説や漫画で「大人の失踪(蒸発)」を扱った作品は印象に残るし、そのテーマを扱っていると知ってすすんで読んだりして…

 手元にないものも含めて、失踪を扱った作品を思い出してみよう〜ということで。

ネタバレを避けるため、説明は最小限で。ついでに、失踪「する側」と「される側」のどちらの目線かをうろ覚えながら分別しておきます。

失踪する小説 その1 『ゼロの焦点』 松本清張     (される側目線)

清張さんファンで、顔も清張氏に似ている父にすすめられて読んだ一冊。その後、ドラマや映画でも観ましたが、数年前の映画での端正な中谷美紀さんもよかったのですが、火曜サスペンス劇場の再放送だったか、物語の鍵を握る女性をピンクレディーのケイちゃんこと、増田恵子さんが演じたものが印象的でした。

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失踪する小説 その2 『ジャンプ』『身の上話』 佐藤正午  (される側 する側目線)

『ジャンプ』は失踪した恋人を捜すべく、主人公が彼女の足跡をたどるようにいろんな場所へ出かけてゆく話。佐藤さんの小説ではよくあるのが、男性に感情移入して読んでいるつもりが、途中で雲行きがあやしくなり…え、何それ、そういうことだったのぉ〜、と、彼をなじる側の女性目線になってしまう、奇妙な展開に立ちくらみが…。でも、「主人公が犯人だった…」という反則オチのような裏切られ感ではなく、心地よい余韻が残る一冊。

数年前に刊行された『身の上話』は、「失踪する側目線」ですね。

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 失踪する小説 その3 『深淵』〈上〉〈下〉 大西巨人  (する側 される側目線)

自宅にあるのは大西さんの『迷宮』という、ある作家の死の謎にせまるミステリーですが、失踪を扱ったミステリーの『深淵』の方が手元にない分、却って印象が強いのかも。冒頭の数行を読むだけで引込まれてしまう迫力と、「失踪」そのものよりも、見つかった後、一件落着の後の複雑な事情の方にどきりとさせられ、なんともやるせなさを覚えたものでした。でも…あれ、確か結末は思いがけずあんなことに…と徐々に切なさを思い出し、もう一度読みたくなりました。

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失踪する小説 その4 『砂の女』 安部公房 (する側目線)

安部公房さんで一番好きな作品。原作のイメージを守るため映像作品は観ていませんが、検索してみると、「女」を岸田今日子さんが演じているとか。とすると、観たいような…。自分の中ではカフカの『変身』とセットで、読後感がなぜかさわやかな苦闘ものとして何度か読み返しています。

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失踪する小説 その5『火車』 宮部みゆき (される側 目線)

失踪される側目線、と書いたものの、主人公は婚約者に失踪された男性の、遠戚の休職中の刑事、という設定。後半になって、刑事は真実に近づく過程で「失踪する側の心理」に思いをはせるので、「する側」目線小説でもあるような…

しかし、素朴な印象として、物語のきっかけとなる、婚約者に失踪された男性。小説の中で、彼の存在感がとにかく薄い。何度読んでも、むしろ彼の方が失踪したかのような頼りなさです…そういえば、ゼロの焦点の「夫に失踪された妻」もそうだったような。

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失踪する小説 その6『観覧車』『回転木馬』 柴田よしき (される側 する側目線)

「面白い本があるよ」と姉にすすめた中で、好評だった『観覧車』。何年も経ってから、姉が「あの本、気に入って、あれから何度も読んでるよ」と折りに触れて話題にする作品。親しみのある土地の風景が出て来ることも我ら姉妹の琴線に触れるのだろうか…。失踪の真相が知りたくて、続編を待って待って、ようやく出た『回転木馬』には歓喜したのですが、謎が解けてみると、不在の夫を待つ宙ぶらりんなままの主人公が探偵業で人探し、謎解きをする前作の『観覧車』の方が好きかな、と。姉も同意見。

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失踪する小説 その7『64』 横山秀夫   (される側 目線)

うちの本棚にある中で、グラムでも内容でも一番重い部類に入る一冊。丸めた紙を伸ばす時などに重しとして重宝しますが、寝ながら読むと手首、痛し。普段は図書館利用や文庫が多いですが、友人からすすめられたり書評を読んで、文庫化を待たずに単行本で買いました。

昭和64年に起きた、ある未解決誘拐事件をめぐり、刑事部と警務部がもめる中、マスコミとの間でも板挟みとなる「広報官」(元刑事)が主人公。警察内部での悶着の一方で、彼の娘が数ヶ月前に失踪。若い女性遺体発見の情報が入るたび、夫婦で絶望的な思いで対面に行く、という生活の中、かつての事件を模した新たな誘拐事件が起こり…という話。とにかく最後の方まで、主人公のストレスと鬱屈を受けて辛い。息苦しい。しかし、事件が解明されるラストに、おお〜っ、そうだったのか〜、と辛さを忘れてしびれて、最初のページに戻りたくなること必至。

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ふ〜。長くなったので、「失踪する漫画」を思い出すのは次回に。

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